相続税の基礎知識|いくらから課税?計算方法と節税対策
こんにちは、FP2級のあやのです。「相続税って、うちには関係ないよね?」と思っている方、ちょっと待ってください。2015年の税制改正で基礎控除額が引き下げられ、相続税がかかる人は約2倍に増えました。
都市部にマイホームをお持ちの方なら、想像以上に「相続税の対象」になる可能性があります。この記事では、相続税の基礎控除の計算方法から実践的な節税対策まで、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 相続税の基礎控除の計算方法
- 相続税がいくらになるかの計算手順
- すぐに実践できる節税対策5つ
- 生命保険を活用した相続対策
相続税の基礎控除|3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税には「基礎控除」という非課税枠があり、遺産の総額がこの金額以下であれば相続税はかかりません。
基礎控除額の計算式
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数別・基礎控除額
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
たとえば、配偶者と子ども2人の家庭(法定相続人3人)なら、遺産が4,800万円以下であれば相続税はゼロです。
「4,800万円なんて大金、うちにはないわ」と思うかもしれませんが、自宅の土地・建物の評価額を含めると意外と超えてしまうケースがあります。東京23区内に一戸建てを持っているだけで土地の評価額が3,000〜5,000万円になることも珍しくありません。
法定相続人の範囲
法定相続人とは、民法で定められた相続する権利がある人のことです。
- 配偶者:常に相続人になる
- 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:父母(父母が亡くなっている場合は祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹
上の順位の人がいれば、下の順位の人は相続人になりません。
相続税の計算方法|4ステップで解説
相続税の計算は複雑に思えますが、基本的な流れは4ステップです。
Step 1:遺産総額を計算する
不動産、預貯金、有価証券、生命保険金、退職金などすべての財産を合算し、借金や葬式費用を差し引きます。これが「課税価格の合計額」です。
- プラスの財産:不動産、預貯金、株式、生命保険金、自動車など
- マイナスの財産:借入金、未払い税金、葬式費用など
Step 2:基礎控除を差し引く
課税価格の合計額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引きます。この金額が「課税遺産総額」です。ゼロ以下なら相続税はかかりません。
Step 3:法定相続分で按分して税率を適用
課税遺産総額を法定相続分で仮に分割し、それぞれに税率を適用して相続税の総額を計算します。
Step 4:実際の取得割合で按分する
Step 3で算出した相続税の総額を、各相続人が実際に取得した財産の割合で按分し、各人の納付税額を決定します。配偶者の税額軽減などの控除を適用して最終額が確定します。
相続税の税率表
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
計算例
【例】遺産1億円、法定相続人:配偶者+子ども2人の場合
- 課税遺産総額:1億円 − 4,800万円(基礎控除)= 5,200万円
- 法定相続分で按分:
- 配偶者(1/2):2,600万円 → 税率15% − 控除50万円 = 340万円
- 子A(1/4):1,300万円 → 税率15% − 控除50万円 = 145万円
- 子B(1/4):1,300万円 → 税率15% − 控除50万円 = 145万円
- 相続税の総額:340万円 + 145万円 + 145万円 = 630万円
- 配偶者の税額軽減(1億6,000万円or法定相続分まで非課税)を適用すると、配偶者の税額はゼロ
すぐに実践できる節税対策5つ
対策①:暦年贈与を活用する
贈与税の基礎控除は年間110万円。毎年110万円以内の贈与を行えば、贈与税がかからずに財産を移転できます。
たとえば、子ども2人と孫2人に毎年110万円ずつ贈与すると、年間440万円、10年で4,400万円の財産を非課税で移転できます。
⚠ 暦年贈与の注意点
- 2024年以降、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される(以前は3年)
- 毎年同額・同時期の贈与は「定期贈与」と判断されるリスクがある
- 贈与の証拠を残す(贈与契約書の作成、銀行振込で記録)
対策②:生前贈与の特例を活用する
暦年贈与の110万円以外にも、使える特例があります。
- 住宅取得等資金の贈与:省エネ住宅なら最大1,000万円が非課税
- 教育資金の一括贈与:最大1,500万円が非課税(2026年3月末まで)
- 結婚・子育て資金の一括贈与:最大1,000万円が非課税(2025年3月末まで)
対策③:小規模宅地等の特例を使う
被相続人が住んでいた土地について、一定の要件を満たすと最大80%評価額を減額できます。
- 特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額
- 特定事業用宅地等:400㎡まで80%減額
- 貸付事業用宅地等:200㎡まで50%減額
たとえば、5,000万円の土地が1,000万円の評価になるケースもあり、非常に効果の大きい特例です。ただし適用条件が厳しいため、専門家への相談をおすすめします。
対策④:生命保険の非課税枠を活用する
次のセクションで詳しく解説しますが、生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。これを活用するだけで数百万〜数千万円の節税効果が得られます。
対策⑤:不動産の活用
現金を不動産に変えることで、相続税の評価額を下げることができます。
- 現金1億円 → 相続税評価額1億円
- 不動産1億円 → 相続税評価額約7,000〜8,000万円(土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価)
さらに賃貸に出すと「貸家建付地」として評価額がさらに下がります。ただし、不動産投資にはリスクもあるため、節税目的だけで安易に始めるのは避けましょう。
生命保険を活用した相続対策
生命保険は相続対策として非常に優れたツールです。その理由を3つご紹介します。
理由①:非課税枠がある
生命保険金の非課税枠
500万円 × 法定相続人の数
法定相続人が3人なら、1,500万円まで非課税で受け取れます。
たとえば、現金1,500万円をそのまま遺すと全額が課税対象ですが、この1,500万円で生命保険に加入しておけば非課税で受け取れるのです。
理由②:受取人を指定できる(遺産分割の対象外)
生命保険金は受取人固有の財産として扱われ、原則として遺産分割協議の対象になりません。「この財産は確実にこの人に渡したい」という意思を実現できます。
理由③:納税資金として活用できる
相続税は原則として現金で一括納付する必要があります。遺産の大部分が不動産の場合、納税資金が足りないことがあります。生命保険金は比較的すぐに現金として受け取れるため、納税資金の確保に最適です。
相続対策としての生命保険は、終身保険がおすすめです。いつ亡くなっても保険金が支払われ、非課税枠を確実に活用できます。年齢が上がるほど保険料が高くなるので、早めの加入がお得ですよ。
相続税に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 相続税の申告期限はいつですか?
相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。申告と同時に納税も必要です。期限を過ぎるとペナルティ(延滞税・加算税)がかかるため、早めに準備を始めましょう。遺産分割がまとまらない場合でも、法定相続分で仮申告する必要があります。
Q2. 配偶者はいくらまで相続税がかかりませんか?
「配偶者の税額軽減」により、配偶者が取得する財産が1億6,000万円または法定相続分のいずれか大きい金額までは相続税がかかりません。ただし、配偶者に財産を集中させすぎると、次の相続(二次相続)で子どもの税負担が大きくなるので注意が必要です。
Q3. 相続税の相談は誰にすればいいですか?
税理士への相談がベストです。特に相続税に強い税理士を選びましょう。相続税の申告件数が多い税理士事務所なら、土地の評価や特例の適用で有利になることがあります。初回相談無料の事務所も多いので、まずは相談してみることをおすすめします。
Q4. 借金も相続しなければなりませんか?
いいえ、相続放棄をすれば借金を引き継がなくて済みます。ただし、相続放棄をするとプラスの財産も含めてすべて放棄することになります。相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。「限定承認」という、プラスの財産の範囲内で借金を引き継ぐ方法もあります。
Q5. 生前贈与と相続、どちらが税金的に有利ですか?
一般的に、相続税の税率が高くなるケース(遺産が多い場合)は生前贈与が有利です。贈与税の税率のほうが高い場合もありますが、年間110万円の基礎控除を活用して少額ずつ贈与すれば非課税で財産を移転できます。ただし2024年以降は相続前7年以内の贈与が加算されるため、早めに始めることが重要です。
まとめ|相続税対策は「早めに」「正しく」始めよう
この記事のポイント
- 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 都市部に不動産があると意外と課税対象になる
- 暦年贈与(年110万円)や生命保険の非課税枠を早めに活用
- 小規模宅地等の特例で土地の評価額を最大80%減額可能
- 配偶者の税額軽減は強力だが二次相続も考慮する
- 相続税に強い税理士への相談がおすすめ
相続税対策は「まだ早い」と思っているうちに始めるのがベスト。特に生前贈与は時間をかけるほど効果が大きいので、思い立った今日が始めどきです。まずはご自身の財産がどのくらいかを把握することから始めてみましょう。
